精神疾患の治療中に太る理由と体型の印象|健康的に痩せるメリット

「精神疾患の治療を始めてから太った」「体型のせいで、だらしないと思われていないか気になる」。体重の増加と周囲の視線が重なると、外に出ることまで負担になる人もいるでしょう。

肥満によって健康上の問題が生じているなら、無理なく痩せることには意味があります。精神疾患のある人も、身体の健康を守るための支援を受けてよいのです。一方で、体型だけを見て、その人の性格や努力を判断することはできません。

この記事では、太っている人が与える印象に関する研究、精神疾患の治療中に太りやすくなる背景、健康的な減量のメリットと始め方を紹介します。対象は主に成人です。精神障害という言葉にはさまざまな状態が含まれるため、統合失調症など特定の疾患の研究を、すべての人に当てはめないように読み進めてください。

太っている人が与える印象と研究で分かること

体型から性格を推測してしまうことがある

人は、話したことのない相手でも、外見から性格を想像することがあります。2018年の研究では、米国の大学生76人が、140種類の男女の3D体型モデルを見て性格の印象を評価しました。体重が多そうな体型は「怠けていそう」「不注意そう」、細身の体型は「自己規律がありそう」などの印象と結びついていました。文献1⁠ 

ただし、測定したのは見る側の印象です。モデルに実際の性格があるわけではなく、「太っている人は怠け者だ」と証明した研究ではありません。また、海外の大学生によるCGの評価を、日本の職場や人間関係にそのまま当てはめることもできません。

仕事の評価にも外見の偏りが入り込む可能性がある

別の研究では、資格や経験が同等という条件で応募者の顔写真を提示し、サービス職への採用しやすさを評価してもらいました。写真を体重が多く見えるように加工すると、とくに女性の評価が下がる傾向がありました。文献2⁠ 

これは模擬的な採用評価であり、実際の仕事の能力を調べた結果ではありません。それでも、体型が本人の能力とは別のところで評価に影響する可能性は読み取れます。「太っている人は自己管理ができない」という見方も、本人の生活や治療の事情を確かめずに下される判断になり得ます。

見た目を整えたい、好きな服を着たいという気持ちは、体重管理のきっかけにしてよいと思います。ただ、痩せることを、人から尊重されるための条件にする必要はありません。

体型を責める言葉は減量の支援になるのか

肥満への偏見を扱った国際共同声明は、体重に基づく差別が、心身の健康や適切な医療を受ける機会に悪影響を及ぼし得ると指摘しています。文献3⁠ 

米国の中高年者6,157人を4年間追跡した研究でも、体重差別の経験は、その後の肥満の発生や持続と関連していました。観察研究なので因果関係までは断定できませんが、「厳しく体型を指摘すれば痩せる」と単純には考えられません。文献4⁠ 

ここから私が大切だと考えるのは、健康のための体重管理を勧めるときに、その人が取り組みやすくなる言葉を選ぶことです。「なぜ太っているのか」と責める前に、「何が体重管理を難しくしているのか」を一緒に考える方が、具体的な支援につながります。

精神障害がある人は太りやすいのか

「精神障害者に太っている人が多い」と感じる場面があっても、その印象だけで全体を説明することはできません。診断名、年齢、使っている薬、入院中か通院中かなどによって、状況は異なります。

日本の統合失調症患者を対象とした全国調査では、外来患者は入院患者より、肥満や糖尿病などの割合が高いと報告されました。文献5⁠ 一方、同じ全国調査に基づく別の論文では、入院患者の低体重や低栄養も問題として報告されています。文献6⁠ 

これらの調査は、同じ診断名でも生活や療養の環境によって体重の問題が異なることを示しています。「精神障害のある人はみんな太っている」という根拠にはなりません。

したがって、正確には「精神疾患のある人の一部では、治療や生活上の条件が重なって体重が増えやすくなる」と考えるのが適切です。太り過ぎへの支援が必要な人も、十分に食べて体重や筋力を保つ支援が必要な人もいます。

精神疾患の治療中に太る主な理由

薬による体重増加や代謝への影響

抗精神病薬の中には、体重や血糖、血中脂質に影響するものがあります。統合失調症を対象とした100件のランダム化比較試験、計25,952人をまとめた研究では、18種類の抗精神病薬の間で代謝への影響に差があり、オランザピンやクロザピンなどは影響が大きい側に位置していました。文献7⁠ 

この結果は、特定の薬で全員が太ることや、別の薬なら絶対に太らないことを意味しません。主に短期間の試験をまとめた結果であり、実際の治療では症状への効果や他の副作用も合わせて考えます。

薬による体重増加には、食欲や満腹感の変化が関わる場合もあります。一部の抗精神病薬が食欲の調節に影響することはレビューでも整理されています。「以前より空腹を感じる」「食べても満足しにくい」といった変化自体を、治療の相談事項にできます。文献8⁠ 

抗うつ薬についても、米国の183,118人の診療記録を使った研究で、薬剤によって体重変化が異なることが示されました。ただし、薬剤間の平均差は小さく、個人の体重変化をそのまま予測できるものではありません。文献9⁠ 

薬の影響がある以上、体重が増えたことを本人の意志の弱さだけで説明するのは無理があります。「薬を始めてから増えた」「食欲や眠気が変わった」という気づきは、診察で共有する価値のある情報です。

症状や体調のために活動が難しくなる

気分が落ち込んでいるとき、強い不安があるとき、疲れやすいときには、買い物に出るだけでも大きな負担になることがあります。運動の必要性を知っていても、実行するまでのハードルが高い状態です。

統合失調症、双極性障害、大うつ病性障害を対象とした69研究のメタ解析では、対象集団は比較対象より身体活動が少なく、座って過ごす時間が長い傾向にありました。研究では、気分の落ち込み、身体の病気、自信や社会的支援の不足など、運動を妨げる要因も論じられています。文献10⁠ 

「やる気を出して運動して」と伝えるだけでは、この負担は小さくなりません。まず短い散歩にする、外出が難しい日は室内で動く、支援者と一緒に取り組むなど、実行できる条件をつくることが必要です。

食事や運動を続けるための環境が整いにくい

体重管理には、食事を選ぶ余裕、買い物や調理に使える体力、身体を動かせる場所なども関係します。例えば、食事を作る気力がない人に、毎日すべて自炊する計画を勧めても、続けるのは難しいでしょう。

これは、本人に合う方法を考えるための視点です。主食に卵や豆腐、調理済みの野菜を組み合わせるなど、負担の少ない選択肢から検討できます。費用や生活環境も含めて相談することが大切です。

WHOのガイドラインも、重い精神疾患のある人に対して、身体の健康管理や、個々の必要に合わせた生活習慣の支援を重視しています。文献11⁠ 

体型から受ける印象と、体重が増えた背景には、このように大きな隔たりがあり得ます。第一印象だけで事情が分からないからこそ、健康について話すときには、治療と生活の両方を見る必要があります。

健康的に痩せるメリットと適切な目標

血糖や脂質など身体の健康を守る

精神疾患の治療中に体重を確認する意味は、見た目の変化だけではありません。統合失調症などの精神病性障害、双極性障害、大うつ病性障害を含む198研究のメタ解析では、メタボリックシンドロームの割合は32.6%でした。文献12⁠ 

これは「精神障害のある人の3人に1人が肥満」という数字ではありません。メタボリックシンドロームは、腹部の脂肪蓄積や血圧、血糖、脂質などを組み合わせて評価する状態です。また、研究された集団の結果を、すべての精神障害のある人の現在の割合として扱うこともできません。

それでも、体重と一緒に健診結果を確認する必要性は分かります。体重が増えているうえに血糖や中性脂肪なども悪化しているなら、主治医と相談して改善に取り組む理由があります。

最初から大幅な減量を目指す必要はない

日本ではBMI25以上が肥満の基準です。ただし、「肥満」と、関連する健康障害や内臓脂肪の蓄積があり医学的な減量を必要とする「肥満症」は区別されます。体重だけでなく、合併症などを合わせて判断します。文献13⁠

日本肥満学会のガイドラインをまとめた論文では、高度肥満症に該当しない肥満症の初期目標として、現在の体重の3%以上の減量を示しています。80kgなら3%は2.4kgです。これはすべての人への一律の目標ではなく、病状によって目標は変わります。文献13⁠ 

「何十kgも落とさないと意味がない」と考える必要はありません。健康上の改善が必要な人が、体調を崩さずに取り組める目標を決めることが出発点です。普通体重や低体重の人まで、見た目だけを理由に減量する必要はありません。

薬を飲んでいても減量に取り組めるのか

薬や症状の影響があると、「自分は何をしても痩せられない」と感じるかもしれません。しかし、本人の状態に合わせた支援で体重が改善した研究があります。

米国のACHIEVE試験では、過体重または肥満があり、統合失調症や双極性障害などの重い精神疾患を持つ成人291人を対象に、食事・運動などの支援を行いました。18か月後の減量幅は、支援を受けた群が対照群を平均3.2kg上回りました。文献14⁠ 

抗精神病薬を服用するBMI27以上の成人200人を対象にしたSTRIDE試験でも、生活習慣への支援による体重変化の差は、対照群と比べて6か月で4.4kg、12か月で2.6kgの減少でした。文献15⁠ 

これらの数字は研究集団の平均的な群間差です。誰もが同じ期間で同じだけ痩せる保証ではありません。共通するのは、食事や運動を勧めるだけで終わらせず、症状や生活に合わせた支援を継続していることです。

体重管理がうまくいかないときには、努力の量だけを見直すのではなく、方法や支援の受け方を変える余地があります。

精神疾患の治療中に無理なく体重を整える方法

体重の変化を記録して主治医に相談する

まず、いつからどのくらい体重が変わったかを整理します。薬を始めた時期や変更した時期、食欲、眠気、活動量の変化も一緒に伝えると、相談の手がかりになります。

英国NICEの統合失調症のガイドラインでは、抗精神病薬の使用に際して、体重、腹囲、血圧、血糖やHbA1c、血中脂質などの確認と継続的な評価を勧めています。文献16⁠ 

体重増加が気になっても、自己判断で薬を減らしたり中止したりしないでください。薬を変える必要があるかも含め、治療効果と身体への影響を主治医と一緒に検討します。

食事は続けられる変更を一つ選ぶ

最初の取り組みとして、甘い飲み物を飲んでいるなら一部を水や無糖のお茶に替える、間食を袋のまま食べずに一回分を取り分ける、欠食が続くなら食事の時間を相談する、といった方法が考えられます。

これらは一律の治療メニューではなく、生活を見直すための例です。強い空腹を我慢し続ける計画や、食事を極端に抜く方法を前提にせず、現在の食べ方を主治医や管理栄養士に伝えて調整しましょう。食事療法・運動療法・行動面の支援を組み合わせる考え方は、肥満症のガイドラインでも示されています。文献13⁠

散歩や室内の運動をできる量から始める

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、個人差に合わせて量や強度を調整し、今より少しでも身体を動かすことを勧めています。成人の筋力トレーニングの目安は週2~3日ですが、体調に合わせた調整が前提です。文献17⁠ 

例えば、体調のよい日に5分だけ歩く、長く座っていたら一度立って室内を移動する、支えを使って椅子からゆっくり立ち上がる練習をする。こうした小さな行動を、自分が実行できる場所と時間に組み込みます。5分という数字は始め方の例であり、精神疾患の治療に必要な運動量を示すものではありません。

「太っているからジムに行くのが恥ずかしい」と感じるなら、自宅や人の少ない場所で始めても構いません。痛み、めまい、強い息切れが出る場合には無理をせず、病状や持病に合う運動を医療者に確認してください。

体重以外の変化も成果として残す

うつ症状を対象とした218研究のメタ解析では、ウォーキングやジョギング、筋力トレーニングなどの運動による症状の改善が報告されています。ただし、多くの比較で根拠の確実性は低い、または非常に低いと評価されており、全員への同じ効果を保証するものではありません。文献18⁠ 

この研究は「痩せたからうつ病が治る」と示したものでもありません。運動に取り組むときは、体重とともに「今週は外出できた」「前より楽に歩けた」「続けられる運動が見つかった」といった変化も記録してみてください。

体重がすぐに減らなくても、取り組みのすべてが失敗になるわけではありません。気分や睡眠を含めた体調、検査値、生活のしやすさを見ながら、続け方を調整します。

一人で抱えず継続できる支援を使う

精神科の主治医、かかりつけ医、管理栄養士、デイケアのスタッフなどに、体重の悩みも相談して構いません。「食欲が強くて困る」「運動を始めても続かない」と具体的に伝えることから始められます。

WHOは、重い精神疾患のある人の身体的な健康が見過ごされやすく、医療へのアクセスにも課題があるとしています。文献11⁠ 心の治療と身体の健康管理を一緒に進めることは、遠慮するような相談ではありません。

体重と精神疾患についてのよくある疑問

精神科の薬を飲んでいる人は必ず太るのか

必ず太るわけではありません。薬の種類や個人の状態によって影響は異なります。体重の変化があれば、薬の効果と合わせて主治医に相談してください。文献7⁠

痩せれば精神障害もよくなるのか

減量によって精神障害が治るとはいえません。必要な人の体重管理は身体の健康を守るために行い、精神疾患の治療は継続します。運動によるうつ症状への効果と、減量そのものの効果も分けて考える必要があります。文献18⁠

痩せている方が人からよく見られるのか

体型が印象に影響する研究はありますが、相手や場面によって評価は異なります。痩せれば人間関係や仕事が必ずうまくいくとはいえません。健康のための目標と、他人の評価への期待を分けておくと、体重管理の目的を見失いにくくなります。文献1⁠ 文献2⁠

自分の健康のために体重を整えていこう

私は、体重が増えて悩んでいる人に、改善を諦めてほしくありません。精神疾患や薬の影響があると、取り組み方には工夫が必要です。それでも、身体を動かす楽しさや、自分に合う食べ方を見つける余地はあります。

体型が第一印象に影響することはあっても、その印象から治療の事情や日々の努力まで分かるわけではありません。だからこそ、体型で人を決めつける見方を改めることと、健康に必要な体重管理を支えることを、どちらも大切にしたいと思います。

肥満による健康リスクがあるなら、無理なく痩せることを前向きに考えてみてください。 最初の一歩は、診察で体重について話すことでも、飲み物を一つ替えることでも、短い散歩でも構いません。治療を続けながら、自分の身体を大切にできる方法を探していきましょう。

関連する記事:運動でメンタルは強くなる 精神の安定につながる理由と始め方⁠

参考文献

  1. 文献1⁠:Hu Y, et al.(2018). First Impressions of Personality Traits From Body Shapes. Psychological Science. DOI: 10.1177/0956797618799300.
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  3. 文献3⁠:Rubino F, et al.(2020). Joint international consensus statement for ending stigma of obesity. Nature Medicine, 26, 485–497. DOI: 10.1038/s41591-020-0803-x.
  4. 文献4⁠:Sutin AR, Terracciano A.(2013). Perceived Weight Discrimination and Obesity. PLOS ONE, 8(7), e70048. DOI: 10.1371/journal.pone.0070048.
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  9. 文献9⁠:Petimar J, et al.(2024). Medication-Induced Weight Change Across Common Antidepressant Treatments: A Target Trial Emulation Study. Annals of Internal Medicine, 177(8), 993–1003. DOI: 10.7326/M23-2742.
  10. 文献10⁠:Vancampfort D, et al.(2017). 統合失調症・双極性障害・大うつ病性障害における座位行動と身体活動量の系統的レビューとメタ解析. World Psychiatry, 16(3), 308–315. DOI: 10.1002/wps.20458.
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